2010年3月20日土曜日

パワーコントローラ付きMODを作成しました。


まえがき



以前から電圧調整が可能な回路をMODへ組み込むことを考えていましたが、
定電圧回路に必要なパーツ、特に平滑用コイルやコンデンサの大きさから、
小型化が難しいことを確認していたので、半ば諦めかけていました。

その後新しいMODを作る度、それなりに満足はしていたものの、
「何とかしてパワー調整ができる回路を組み込めないものかな?」という思いを
断ち切ることができずにいました。
電圧調整のために定電圧レギュレータやセメント抵抗を載せてみたりもしたのですが、
発熱が大きいことや、電力のロスが増えること、また微調整が難しいことなどもあり、
納得できる結果は出せていませんでした。

そんな思いを頭のどこかに抱えて幾星霜...(大嘘w
MOD作成の合い間に、ぼんやりとプリントアウトした定電圧回路図を
眺めていたときに、そのアイディアは突然閃きました。

...まてよ、出力先(負荷)媒体は単なるニクロム線だよな...ってことは...
別に定電圧回路にする必要ってないじゃんw(オイオイ

その瞬間、PWM方式を使用した、非定電圧式の無段階パワーコントローラの設計図が
私の頭の中に出来上がっていたことは言うまでもありません(もちろん大嘘ですw

PWMやデューティ比の意味に関しては、下記Wikiなどをご参照ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%B9%85%E5%A4%89%E8%AA%BF
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E6%AF%94

※「チョッパ制御」をご存知であれば、すぐお判りいただけるかと思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%91%E5%88%B6%E5%BE%A1

ご注意
あらかじめお断りしておきますが、本回路はいわゆる「定電圧回路」ではありません。
デューティ比を使用した、「無段階出力可変回路」(チョッパ制御)であることをあらかじめご了承ください。
このため、出力される電圧(V)は常にほぼ電源電圧(7.4V~)となりますので、
正確な出力電力(W)の確認が必要な場合は、オシロスコープなどによる
デューティ比/電圧の測定と計算が必要となります。

また、記載の各種データやパーツ類は、実環境で動作を確認している参考情報となります。
さらに効率の良い設定やパーツの組み合わせがある可能性があることを、あらかじめご了承ください。
また製作や使用にあたってのフォローなどもいたしかねますので、
くれぐれも自己責任にてお試しくださるようお願いいたします。









・デューティ比変更回路を使用した無段階パワーコントローラの原理。
以前記載しましたが、LTカトマイザや510アトマイザの抵抗値は2.2Ω程度です。
これを基準として、定電圧電源使用時の出力に相当するデューティ比を計算すると、おおよそ以下の通りとなります。
デューティ比100%...7.4×7.4÷2.2=24.9W
3.7V相当...3.7×3.7÷2.2=6.22W≒デューティ比25%(左の画像)
5V相当...5×5÷2.2=11.36W≒デューティ比45%(45%オン、55%オフ)
6V相当...6×6÷2.2=16.36W≒デューティ比66%(66%オン、34%オフ)
実際に使用する発振周波数については、一般的な電圧制御回路で使用するような
数十kHz程度の高周波にすると、波形が歪むなどの問題が発生する可能性があるため、
低周波(100Hz前後)を目安に時定数のコンデンサ、抵抗値などを設定しています。
この程度の周波数であれば、蛍光灯が点滅しているのが判らないのと同様に、
発振回路自体のオン/オフを感じることはありません。
デューティ比の調整は、VRを含めたCR定数を使用しています。
このため、VRの調整により、無段階での出力電力の調整を行うことが可能となっています。
定電圧回路や抵抗器などでの調整とは違って、「もうちょっと高出力が欲しい」
「もうちょっと低出力でもいい」などの場合にも、微調整を行うことが可能です。

またこの回路の最大のメリットは、「電力のロスが極端に少ない」ことです。
アトマイザを付けない無負荷状態での、デューティ比調整回路自体の消費電流は、
実測値で1mA以下(TTL版のNE555の場合は10mA以下)と低いうえ、
スイッチをOFFにしている間の待機電力も必要ありません。
FETの抵抗値はアトマイザの500分の一以下(Typ値4mΩ程度)なので、
こちらも計算上は10mA以下相当の消費電力となり、
理論上の電力変換効率は99%以上(アトマイザ3.36A/回路合計11~20mA、510アトマイザの場合)となります。
実際に使用してみると判りますが、3.7V相当程度の出力で使用した場合、
ほぼ14500電池×2本分程度の長時間の連用が可能になります。
※レギュレータや抵抗を使用した場合は、電池とアトマイザへの供給電圧の差が
発熱などで消費されるため電力のロスが大きくなり、電池本数相当の連用はできません。

なお、ボリュームを最小にした場合、数%程度までデューティ比を小さくすることができるので、
3.7V以下の電圧に相当する出力に調整することも可能です。
高出力で連用すると、口内の中が低温やけど気味になる場合があるので、
より長時間ダラダラ吸い続けたい方は、やや低めの出力のほうがオススメです。
また普段は低出力で使用し、気が向いたら数口だけ高出力にすることや、
アトマイザやリキッドの状態に応じて微調整を行うことも可能となっています。


それではいよいよパワーコントローラ付きMODの製作に入りましょう。









今回作成したMODの回路図です。
電子回路に詳しい方ならすぐお判りいただけると思いますが、
ごく一般的な555というタイマICを使用した、デューティ比調整回路と、
出力段のパワーFETの組み合わせです。
実装スペースなどの都合上、左側のピンクの部分はVR上で配線を行っています。
なお、「TESTC」は周波数を1Hz程度まで落として、
MOD自体の動作チェックを行う場合に使用するコンデンサですので、
チェックが不要な場合は実装する必要はありません。
チェックが必要な場合は写真のようにICソケットなどを使用して、
付け外しができるようにすると便利です。


















今回は出来上がった回路を単三×3本のケースに組み込むことにしました。
基板は2.54mmピッチのIC用プリント基板を、5×7にカットして使用します。
あらかじめ他のパーツと共にセットして、ケースにきちんと収まることを確認してください。













完成した基板はこんな感じです。














基板上の配線図です。
裏側(配線側)になりますのでご注意ください。
赤線はジャンパ線、緑は配線での結線が必要ですので、忘れずに配線してください。













実際に作成した基板を裏側から見た写真です。
配線図と見比べていただくと、ほぼ同じ構成であることが
お判りいただけるかと思います。














VR上のパーツと配線です。
VRは市販の小型VR(9mm×11mm、角型)を使用しています。
※秋葉原の千石電商3号店店頭でB500kのものを購入していますが、
残念ながらネット通販には同じ製品はありませんでした。
2連ボリュームならネット通販でも同じ大きさのものが
ありましたので、こちらを使用しても構いません。
WEBで入手したパーツでは、マルツパーツ館で販売しているもので動作を確認しています。
http://www.marutsu.co.jp/user/shohin.php?p=62776 (B500k)
http://www.marutsu.co.jp/user/shohin.php?p=62777 (B1M)









相当する大きさの物が購入できない場合は、
写真の半固定抵抗などを使用してうまく代用してください。







VRはツマミが長いので、適当にカットして高さを抑えます。
軸はアルミ製なので、糸ノコで比較的簡単にカットできました。
バリなどが気になる場合は、ヤスリで削って整えてください。
















出力段のパワーFETは、放熱板付きのIRL3713を使用しましたが、
購入したままでは高さがあるので単三電池ケースへは収まりません。
そこで、思い切って糸ノコで放熱板をカットしましたw
また、足が太くてプリント基板の穴に入らないので、こちらも削っています。
ニッパーなどでうまく削るか、プリント基板の穴を広げて取り付けてください。
あまりオススメはできませんが、今回は収納の都合上、プリント基板にFETの
底面が付くようにセットしてハンダ付けしています。


















別途入手したSTB100NF04Lは放熱板があらかじめカットされているので、
加工が面倒な方はこちらの形状の物をご利用ください。
※こちらを使用する場合も、足の加工は必要になります。
写真の左側がIRL3713、右側がSTB100NF04Lです。

他のパワーFETを使用する場合は、ON抵抗が小さく(10mΩ以下を推奨)、
IDのアンペア数が大きいもの(最低でも50A以上が推奨)を使ってください。
実機ではIRL3713、ならびにSTB100NF04Lでの動作を確認しています。

参考情報ですが、日本国内では、若松通商の下記ページから購入できます。
http://www.wakamatsu-net.com/cgibin/biz/pageshousai.cgi?code=11010543&CATE=1101
http://www.wakamatsu-net.com/cgibin/biz/pageshousai.cgi?code=11030449&CATE=1103
またデータシート(pdf)は下記サイトなどで入手できます。
http://www.alldatasheet.jp/














スイッチは電子回路があるため、チャタリングなどのノイズ防止を兼ねて
物理スイッチではなく、市販のプッシュスイッチを使用しました。
今回使用したのは共立エレショップで入手した、ミヤマ電器製のDS-660R-Cです。
スイッチ上部のカバーを取り外して使用します。
スイッチを通す穴をきつめにすると、ハメ込みのスイッチとして固定できて便利ですw
定格1Aなのでちょっと不安ですが、現在のところ問題なく使用できています。
余裕をみて、定格3A以上のスイッチを使うほうがオススメなんですが、適当なスイッチが見つからなかったので...

参考情報ですが、日本国内では共立エレショップの下記ページから購入できます。
http://eleshop.jp/shop/g/g76R135/














というわけで出来上がり^^。
※試作時の写真のため、使用している部品などが回路図とは一部異なります。気にしないでください(オイ













側面からの写真です。


















正面からの写真です。
VRツマミとLT互換カトマイザを取り付けています。
ちなみにアトマイザに付いているテープは、洗浄回数などのカウント用ですので気にしないでくださいw














VRのツマミは指で回せるので、無くてもあまり困らないですが、
必要な場合は適当なものを取り付けて使用してください。
高さが気になる場合は、写真のようにツマミをカットしたものを使用する方法もあります。


実際に使用して、設計どおりの動作になっていることを確認しました。
低ON抵抗のパワーFETを使用したため、最低出力からアトマイザが焼き切れそうな
ハイパワーまでのいずれでも、FETが全く温まりません。大成功です(^o^)/
※FETでの電力のロスがほとんど無いため、発熱は実質無視できる程度です。
なお、デューティ比100%では7.4VMODと同等となり、アトマイザがのニクロム線が切れる
可能性があるので、初回通電時などはくれぐれもボリュームの位置にご注意ください。















パーツなどに余裕があれば、写真のような回路の動作チェック用のMODを作成のうえ、
あらかじめICやFETのチェックを行うことをオススメします。
※CMOSICやFETは静電気や熱に弱いので、壊さないようくれぐれもご注意ください。



















実機製作の前に作ったこの動作チェック用MODは、その後単三×4本のケースに固定されましたw

動作チェックMODの参考動画(YouTube)です。
画面右下にある円筒形のパーツが、510アトマイザになります。
後ろにあるボリュームを調整して、出力を変更していますが、
右上のLEDの点滅状態と、510アトマイザの発熱状態を比較していただけると、
本MODの動作原理がより判り易いかと思います。
なお、この動画では、TESTC(1uF程度)を追加した状態となっており、
発振周波数が1Hz程度での動作となっています。
実際にはこの100倍程度の速さで、パワーFETのON/OFFが行われますので、
発振回路のON/OFFを体感することはありません。


TESTCを使用し、1Hz程度で動作させた動画。
http://www.youtube.com/watch?v=6-kZHgWzuUo


同じ動作チェックMODの参考動画ですが、こちらは
TESTCを取り外して、設計通りの周波数(100Hz程度)で動作させた場合です。
こちらも後ろにあるボリュームを調整して、出力を変化させています。
煙で見にくい部分がありますが、出力が連続的に変化しているのが
お判りいただけるかと思います。
※スイッチは押しっぱなしのまま、ボリュームを適当に調整しています。
ボリュームを時計まわりに回して上げると出力が増加してアトマイザが赤熱し、
逆に回すと出力が低下し、アトマイザが冷えて暗くなります。
ボリュームを変化させなければ、出力は一定に維持されます。



TESTCを取り外し、100Hz程度で動作させた動画。
http://www.youtube.com/watch?v=Y9PuKBisX9o

















今回使用したCMOSタイマIC、LMC555です。
秋月電気では5個パックが100円と、とてもリーズナブルでした^^。


















配線はこちらの耐熱電子ワイヤーを使用しています。
回路部分はパーツと同じ穴に差し込める0.26mm径を、アトマイザ周りの電流が多い部分は
太めの0.5mm径のものを使用しました。


ちょっと見づらいですが、0.26mmのワイヤーは下記写真のように、コンデンサやICの足と
同じ穴に差し込んでハンダ付けすることができ、必要な基板の面積を減らせています。
















ちなみにKR608Aパイプ用の14250電池を使えば、単三電池×2本のケースでも実装できそうですが、
さすがにこれ以上電池や充電器の種類を増やしたくないので...お暇な方はぜひお試しください。
14250電池は下記Heaven-Giftsなどで、KR608Aパイプ用のパーツとして販売されています。
ただしプロテクト無しの電池と思われるので、ご利用の際は充分ご注意ください。
http://www.heaven-gifts.com/index.php?gOo=goods_details.dwt&goodsid=344&productname=



完成したMODのネーミングは結局いいのが思いつかなかったので、とりあえず使用しているタイマIC555から、
電子タバコⅤ3、もしくは電子タバコ555(ファイズ)あたりでお茶を濁しておきますw


あとがき
今回は久しぶりの大型更新となったこともあり、長文誠に失礼いたしました。
電子工作に不慣れな方には工具などの調達を含めて敷居が高く思えるかもしれませんが、
難易度自体は低めの回路ですので、お暇があればぜひ挑戦してみてください。

実際にこのMODを作ってみて意外だったのは、2ピースや510アトマイザを使用した場合でも、
低出力(3.7V相当以下)にすることで、煙量は減りますが、
風味が他のアトマイザ並みに強めに感じられたことです。
やはり過剰な高出力は、リキッドの風味を犠牲にするようですね。
※あくまでも私個人の感想です。反論は受け付けませんw


というわけで、最近は逆に低出力でのダラダラ吸いにハマってしまっているDragonでした。
でもリアタバも減りはしたものの、まだ完全にやめてはいないぞ、っと...((((((((((^^;;